『映画エロス』橋本治+マンガ関連記事リスト

 

「『映画エロス』というのはヘンな雑誌で、レッキとしたエロ本であるにも拘わらず、一貫したテーマが“発情を拒否する”というセンだったんで、あんまり売れませんでした。値段も九八〇円だったし。僕達の悲願は、ただひたすら値段を下げて売れるように! だったのですが、とうとう出来ませんでした。そんで、そんなことをやってる内に、やることやり尽しちゃったので、“じゃ、もう止めよう”ということで、廃刊になりました。/『映画エロス』というのは、ミニコミでもなんでもない、レッキとしたエロ本出版社から発行されてたエロ雑誌だったのですが、貞操観念のまったくない僕達は、それを同人誌代りにして、強く生きてました。『映画エロス』から後、同人誌というものは、全く性格を変えるでしょう。ひょっとしたら、『映画エロス』というのは、発情を拒否するエロ本だったぐらいだから、同人雑誌を否定する同人雑誌であったのかも分りません」

橋本治「あとがきじゃないあとがき」、『秘本世界生玉子 KIMPIRA-GOBOW for HuMen』北宋社、1980年2月1日、pp. 382–383、改行は/で示した)

 

『映画エロス』は司書房から隔月で刊行された雑誌である。1977年7月1日に創刊号が発行され、1980年1月1日発行の1月号(通巻16号)をもって終刊した。当初はA5判で「ヤングのための燃えるシネ・マガジン」というキャッチコピーが付されていたが、途中からB5判に判型が変更され、キャッチコピーも号に応じて変化していった。
リスト作成者が現物で確認できたものは、創刊号(1977年7月1日発行、A5判)、第2巻第1号(1978年1月1日発行、A5判)、第2巻第5号(1978年9月1日発行、B5判)から終刊号(1980年1月1日発行、B5判)までの計11冊である。

『映画エロス』では、当初タイトルどおりピンナップや映画情報・批評が主に掲載されていたが、橋本治「映画時評」の連載が開始された第3巻第1号(1979年1月1日発行)以降、田中遊(遅塚久美子)、飯田耕一郎、早川芳子らによるマンガ批評および作品も多数掲載されるようになった。同号にKumiko Chizuka名義で少女マンガ作品「オムニバス♡ラブ♡ロマン たえことたつろう」を寄稿した遅塚によれば、これはアルバイトで『映画エロス』からの依頼を受けたもので、以前から橋本と面識があったわけではなく、同誌にかかわるようになってはじめて知己を得たのだという[1]飯田耕一郎もまた、同誌より三流劇画評論の執筆依頼を受け、編集会議に参加するようになって橋本と親しくなったと語っている[2]
同号以後、映画批評のみならず、音楽やマンガについての批評が掲載されるなど、執筆者の顔ぶれや誌面の内容が変化していったのは、編集会議に執筆者も参加するという同誌の編集体制によるところが大きいだろう[3]。変化の原因を彼ひとりに帰せしめることはできないが、なかでもやはり橋本治の影響力は絶大だったようだ。

 

「橋本さんと会って話していると、人生が変わっちゃうんですよ。ああ、そんな考え方があるんだと、自分の価値観が崩れていく。映画評論にしても少女マンガの評論にしても、いままで見たことのないような評論ですから。橋本さんと仕事をすると、みんなただの編集者じゃなくなっていくんです。世界を変えようという意識をもって編集にかかわっていく。それは大げさにも思えるんですが、橋本さんの考えにはそういう論理的な説得力があるんですよね。それに対して自分にやれることはなにか、いまこの雑誌でなにができるかと。『映画エロス』も毎号毎号変わっていきましたね」(さべあのま高野文子飯田耕一郎「〈座談会〉電話口の橋本治 絵の中の回想」、『ユリイカ』5月臨時増刊号、総特集:橋本治青土社、2019年、pp. 68–69、飯田耕一郎の発言)

橋本治氏の文章の魅力というのは、僕らが現在立ってる地点というものの認識をいやおうなく迫られる、というところにあると思います。ママためて僕らの足元を再—認識させられてしまうわけです。そしてどおいうわけか勇気が湧いてくる」(「編集のページ」、『映画エロス』第3巻第3号、1979年5月1日、p. 167)

「映画エロスもだんだん雑誌のコンセプトというのが出来上がりつつあるわけだが、中には全くコンセプト外という感じのものもあったりするわけだけど、それは未だ男の幻想について無自覚なトーンになってしまったりするわけで、その辺は大いに検討をする」(「編集後記」、『映画エロス』第3巻第4号、1979年7月1日、p. 167)

 

執筆者が編集にもかかわる、そんな同誌がコンセプトに掲げたのは「男の自立」であった。『映画エロス』は、第3巻第2号の編集後記「LAST WORD」で「いかにも痛快に、魅力的に、自立する男の心をファッショナブルに捉えた雑誌」(p. 168)を自認、つづく第3巻第3号において「男の自立を目指す雑誌」(「映画エロス」編集部「エロ本編集者の薔薇色の未来」、p. 71)であると明言し、第3巻第4号で「男の自立」特集を組んでいる。

以下に掲載するリストは、ヌードピンナップやピンク・ポルノ映画の情報を掲載していた映画雑誌が、「男の自立」特集を組むにいたった背景をさぐるために役立てられよう。橋本治の仕事とその影響を検証すること、それが本リストの目的のひとつである。また、『映画エロス』は三流劇画や少女マンガの批評、状況論を掲載するなど、マンガ言説の文脈においてもきわめて重要な「場」として機能していた。本リストのもうひとつの目的は、マンガ言説の「場」としての『映画エロス』誌を調査することにある。
本リストには、したがって、橋本治関連の文章およびマンガ論を中心に採録した。ただし、本誌のコンセプトやその変化を示す文章、同誌でマンガ論を執筆した書き手の文章および創作などについても、第3巻第1号以降に所収のものは採録対象とした。


*『映画エロス』は国内に収蔵がなく、現物未確認の巻号を確認する手段がないため、もしなにか情報をお持ちのかたがいらっしゃいましたらお教えいただけますと幸いです。

*本リストの作成にあたって、飯田耕一郎氏、遅塚久美子氏にご協力いただきました。ここに記して感謝いたします。

 

 

◇『映画エロス』7月号、創刊号、1977年7月1日発行、A5判

 

◇『映画エロス』1月号、第2巻第1号(通巻4号?)、1978年1月1日発行、A5判
*直方由衣「球形の夢 『夢野久作の少女地獄』めぐり」(pp. 130–134)掲載

葉月よき子「少女まんが世界のエロス」、pp. 120–125
→特集「欲情する少女たち」。葉月よき子(大島弓子「F式蘭丸」に由来?)の肩書きは「少女漫画評論家」となっている。大島作品に由来するであろうペンネーム、文体や内容、特徴的なルビのふりかたなどの共通点から、葉月よき子と直方由衣名義の文章はおそらく早川芳子のものとおもわれるが確証はなく、飯田氏も「確認できない」とのこと。なお、早川芳子は『パンドラの匣』9・10月号(創刊第2号、牧神社、1977年10月1日発行)で論考「プシケの銀の実」(pp. 20–22)を発表しており、同誌では「少女漫画の評論という新しい分野を負う若手のホープ」(p. 94)と紹介されている。タイトルはもちろん大島弓子「銀の実をたべた?」から。早川は『わたしは女』1月号(第2巻第1号、JICC出版局、1978年1月1日発行)にもエッセイを執筆しており、そこでの肩書きは「フリー・ライター」となっている。葉月よき子「性風景(5) 私体験」(『映画エロス』5月号、第3巻第3号、1979年5月1日発行)には「20代後半にさしかかった私」(p. 78)とあるが、これは上記エッセイの記述とも一致する。

 

◆『映画エロス』3月号、第2巻第2号(通巻5号?)、1978年3月1日発行
*現物未確認。以下のサイト(https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1225637945)で目次を確認するかぎりで、直方由衣が「小沼勝の世界」、「最新SF映画のすべて」、「エロスの涙 石井隆論」の3本に執筆関与

 

◇『映画エロス』9月号、第2巻第5号(通巻8号?)、1978年9月1日発行、B5判
*「緊急インタビュー 日活ポルノ裁判一審無罪 斎藤正治氏に聞く」(pp. 57–61)、葉月よき子「性風景(1) ストリッパーのピンクのパラソル」(pp. 81–83)、直方由衣「それでも 弱い女の哀しい笑顔」(pp. 139–141、目次タイトル「青山恭子を解剖する」)掲載

 

◇『映画エロス』11月号、第2巻第6号(通巻9号?)、1978年11月1日発行、B5判
*葉月よき子「性風景(2) ティータイム・セックス」(pp. 76–77)、直方由衣「ニュータイプのSEXシンボルを解剖する(3) 青い実、苦いしょっぱいか!?」(pp. 154–155)掲載

 

◇『映画エロス』1月号、第3巻第1号(通巻10号)、1979年1月1日発行、B5判
*この号より通巻表記あり

橋本治橋本治映画時評(1) 『鬼畜』マイナス七十点、『高校エマニエル・濡れた土曜日』プラス六十点!!」、pp. 68–71
→この連載ふくめ、橋本が『映画エロス』に執筆した文章は『秘本世界生玉子 KIMPIRA-GOBOW for HuMen』に収録。

直方由衣「ニュータイプのSEXシンボルを解剖する(4) ケイトとモモエの相姦関係」、pp. 116–117
大島弓子「ほたるの泉」の登場人物(美方由衣子、直方清)に由来するペンネーム?

Kumiko Chizuka「オムニバス♡ラブ♡ロマン たえことたつろう」、pp. 121–127
→少女マンガ作品。

葉月よき子「性風景(3) SHE・HER・HER」、pp. 128–129

角真知子「ブーム最高潮少女漫画最近の動き 大島弓子竹宮恵子もいいけど西尚美に注目」、pp. 132–133

大矢弘「エロ劇画が面白くなるのはこれからだ 飯田耕一郎、スポイルされるには早過ぎる」、p. 133

 

◇『映画エロス』3月号、第3巻第2号(通巻11号)、1979年3月1日発行、B5判
*斎藤正治「78年日活ポルノ総括 経営者の腰のフラツキを尻目に、“日活”の現場は健気にガンバッタ」(pp. 64–65)掲載

葉月よき子「“にっかつ”ポルノの情勢はすばらしい」、p. 60

橋本治橋本治映画時評(2) 僕達の孤独と滅亡 「家族の肖像」批判あるいは何故「ピンクサロン好色五人女」なのか」、pp. 74–78

田中遊「はからずもまんが専門誌「だっくす」で露呈された映画評論家たちのバカさ加減」、pp. 80–83
→『だっくす』1978年9・10月号、同12月号でマンガ論を展開した斎藤正治川本三郎松田政男北川れい子、西脇英夫らを批判。『だっくす』1978年7・8月号、9・10月号、12月号および『ウィークエンドスーパー』1979年2月号の誌面の一部がそのまま掲載されている[4]。なお、『だっくす』9・10月号の「最近気になった新人漫画家たち 少女漫画家編」(pp. 107–118)には協力者として遅塚久美子の名前あり。同コーナーにはおそらく読者はがきとして寄せられた遅塚の文章も掲載されている(p. 117)。

葉月よき子「性風景(4) フラワー」、pp. 84–85

早川芳子「恵まれない青少年のための少女漫画講座(1) 芸者ワルツ Text:大島弓子「草冠の姫」」、pp. 121–123

直方由衣「ニュータイプのSEXシンボルを解剖する(5) 5年目のボウイあるいは不確定性の美学」、pp. 124–125

大矢弘「『劇画アリス』の健闘 石井隆は悪くならない」、p. 129

田中遊「したたかにしなやかに自由に生きる 翔んでる大人のイイ女の話」、pp. 148–152
→マンガ作品。

 

◇『映画エロス』5月号、第3巻第3号(通巻12号)、1979年5月1日発行、B5判

橋本治「THE WAY WE HERE 追憶のテーマ」、pp. 58–61

葉月よき子「名美は堕天使ヒロインなんかじゃない」、pp. 62–65

田中遊「「女」の論理 名美と響子の場合」、pp. 66–69
石井隆作品と山岸凉子「天人唐草」に言及。

「映画エロス」編集部「エロ本編集者の薔薇色の未来」、pp. 70–72
→林幸一郎執筆。飯田氏によれば、編集部名義の文章および編集後記を担当したのは編集長・林幸一郎とのこと。

⇒以上4本、すべて特集「天使のはぎしり」(石井隆原作、曽根中生監督作「天使のはらわた・赤い教室」についての特集)所収。特集巻頭には、「にっかつの「天使のはらわた・赤い教室」は様々な意味で問題作である。この映画をめぐって、私達は討議した。そしてそれぞれ違う角度から同じテーマに辿りついたのである。そのテーマとは「愛」と「自立」である。今現在、天使は天使の使命ママまっとうできず、はぎしりしているのではないか? そういう意味です」(p. 57)とあり。

葉月よき子「性風景(5) 私体験」、pp. 78–79

橋本治橋本治映画時評(3) 女の自立・男の尻」、pp. 82–88

直方由衣「根岸さん、あんた何シナつくってんのよ」、p. 114
根岸吉太郎監督作「女生徒」評。

飯田耕一郎「マンガ評論(1) さらば評論家!!」、pp. 122–125
→前号田中論考に同調、朝日新聞の「少女マンガの世界」特集連載や権藤晋の評論への反発。

早川芳子「恵まれない青少年のための少女漫画講座(2) フォロー・ミー Text:倉多江美「上を見れば雲下を見れば霧」」、pp. 128–130

田中遊「実りなき愛に生きる私」、pp. 131–135
→マンガ作品、小口に「オトメチックロマンのニューウエーブ」という煽りあり。

 

◇『映画エロス』7月号、第3巻第4号(通巻13号)、1979年7月1日発行、B5判
*斎藤正治渡辺護論」(pp. 105–107)掲載

橋本治「Overture 男の自立・提言」、p. 58

橋本治「最も美しい“俺” Pantax’s world論」、pp. 60–65

葉月よき子「赫い髪・金色の髪」、pp. 66–69
山岸凉子「妖精王」「天人唐草」に言及。

飯田耕一郎「自立神経疾風帖あるいは花咲かぬ男たちのオタンコナスビ!!」、pp. 70–72
→『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』を参照した大友克洋論。

(無記名)「言いつくしても言いつくせない若い男のバカさ加減!!」、p. 73
→執筆者は文中に出てくる「編集の林サン」(林幸一郎)?

⇒以上5本「男の自立」特集。

葉月よき子「性風景(6) 愛死体あいしたい」、pp. 76–77

橋本治橋本治映画時評(4) 芥川に捧ぐ 芥川賞作家原作「赫い髪の女」(中上健次)、「限りなく透明に近いブルー」(村上龍)批判」、pp. 78–83

直方由衣「いま危険な映画ポルノに目覚めて……」、pp. 118–119
→ティント・ブラス監督作「ナチ女秘密警察 SEX親衛隊」(ヘルムート・バーガー出演)評。

早川芳子「恵まれない青少年のための少女漫画講座(3) BABY’S ON FIRE Part1 Text:三原順はみだしっ子」シリーズ」、pp. 121–123

飯田耕一郎「マンガ評論(2) 三流劇画・座標’79 自立への提言」、pp. 128–130
石井隆大友克洋に言及。

田中遊と猫まんじCo.「ぐろのあん・あん組」、pp. 131–134
→マンガ作品。柱に「タイムリミット楽屋落ちマンガ」とあるように、『映画エロス』関係者とマンガ作品のパロディで構成されているため、描かれているのが実在する関係者なのかキャラクターのパロディなのか判別しづらいところがある(関係者がマンガのキャラクターに変身するなど、なかにはその両者の性質をそなえるものも)。作者の田中遊=遅塚久美子氏によれば、元ネタになっているのは猫十字社山岸凉子西谷祥子木原敏江萩尾望都池田理代子などとのこと。

 

◇『映画エロス』9月号、第3巻第5号(通巻14号)、1979年9月1日発行、B5判

橋本治橋本治映画時評(5) 奪われちまった哀しみに 工藤栄一監督『その後の仁義なき戦い』論」、pp. 74–81

田中遊「㊙女学生 悶絶セーラー服・変態」、pp. 82–83
→マンガ作品、小口に「おとめちっくエロ劇画」との煽りあり。

亀和田武「思想の自動販売機・番外編 われ遠方より来たりて、遠方に行かん」、pp. 84–85
→『劇画アリス』通巻22号掲載の亀和田武「総括」文中、「ある雑誌の身辺雑誌ママ風のエッセイ」はこの文章を指す。

早川芳子「恵まれない青少年のための少女漫画講座(4) BABY’S ON FIRE Part2 Text:三原順はみだしっ子」シリーズ」、pp. 86–87

田中遊(レポーター)「モノホン女子大生痴漢告白集」、pp. 90–91

橋本治「ソドムのスーパーマーケット」、pp. 92–97、112

山本夏「こころやさしい男ともだちへ 『女教師・汚れた噂』をめぐって」、pp. 98–99

早川芳子「化粧衣良・懸想衣良 大島弓子『バナナブレッドのプディング』によせて」、pp. 100–103

⇒以上4本「Reality100%特集 フェチシズム 汚いその手でさわらないで!!」。

直方由衣「いつか救われる日が確実に訪れることを、今一度信じてみよう!!」、p. 104
橋本治『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』後篇書評。

飯田耕一郎「マンガ評論(3) マイナーでもなくメジャーでもなく」、pp. 110–111

春日井明俊「マジになってはオシマイだ あるいは映画エロス批判!?(ナハハハ…)」、pp. 112–113
→宗豊監督作「ある愛撫・ずぶ濡れ」評。春日井は『映画エロス』常連執筆者。同記事には「編集部からの返事」が寄せられ、「所詮ピンク」といった「露骨な差別」意識が「居直りのワンパターン」として問題視されている。同号特集は、第3巻第3号「エロ本編集者の薔薇色の未来」ですでに示されていた「フェチシズム」の問題と、春日井記事(に代表されるような反応)に対する批判的アンサー(「汚いその手でさわらないで!!」)で組まれている。

ひらたやすよし「大島弓子のまんが・世界は闇に包まれた 暗闇は逢魔の世界」、pp. 114–115
→読者投稿文。

飯田耕一郎「センチメンタル」、pp. 121–136
→マンガ作品。

 

◇『映画エロス』11月号、第3巻第6号(通巻15号)、1979年11月1日発行、B5判

橋本治橋本治映画時評(6) 地獄」、pp. 74–81、pp. 125–131

葉月よき子「性風景(7) 誰が名美アタシを強姦したか」、pp. 86–87

橋本治果汁ネクターつきの鼠取り」、pp. 89–97

早川芳子「MAQULLAGE’80 自愛化粧」、pp. 98–101

飯田耕一郎「’80年代の性感帯」、pp. 102–104

⇒以上3本、特集「幼年期の終りに ’80年の官能論」

橋本治飯田耕一郎・田中遊(作画)「Baby, it’s cold outside」、pp. 105–110
→マンガ作品。こちらも「ぐろのあん・あん組」同様の楽屋ネタ。橋本治(表紙イラスト)、飯田耕一郎・田中遊(本編作画)、仲良し三人組(ネーミング)がスタッフとして、林幸一郎(主演)、田中遊、早川芳子、山本夏、橋本治、二郎クン、イーダコロコロ、土屋名美、菅野美宏、榊原玲奈、亀和田武スペシャルゲスト)、村上知彦(かけ声)がキャストとしてクレジットされている。土屋名美は石井隆「天使のはらわた」、菅野美宏は飯田耕一郎「美宏の季節」、榊原玲奈は橋本治桃尻娘」の登場人物。イーダコロコロは飯田耕一郎の別名義。遅塚氏によれば、二郎クンは山本夏の知人で、同作は魔夜峰央山岸凉子土田よしこのパロディをふくむとのこと。

(無記名)「IN A EDITOR ROOM NAG NAG NAG」、p. 111
→林幸一郎執筆。「あんた、なんで欲情するの?」と「挑発」するのが『映画エロス』の基本姿勢であり、同誌が「エロ本」たる理由でもあるとの宣言。「欲情」を棚上げしたりそこに居直ったりしないための「挑発」。

田中遊「亜月裕としらいしあいに於ける「男」の研究」、pp. 112–113

山本夏「こころやさしい男ともだちへ その2 もうこれっきりにしてっ!!」、pp. 114–115

⇒以上2本も特集表記あり。

早川芳子「恵まれない青少年のための少女漫画講座(5) BABY’S ON FIRE Part3 Text:三原順はみだしっ子」シリーズ」、pp. 116–117

飯田耕一郎「マンガ評論(4) 猫のひたいの——」、pp. 118–119

 

◇『映画エロス』1月号、第4巻第1号(通巻16号)、1980年1月1日発行、B5判
*終刊号

橋本治橋本治映画時評(7) 平行視線四辺形 『団鬼六・花嫁修人形』」、pp. 73–79

葉月よき子「性風景(8) 焉景」、pp. 80–81

井上英樹「日活ロマンポルノはなぜ偉いのか?」、pp. 82–83

飯田耕一郎「マンガ評論(5) 針に糸をとおして」、pp. 84–85
→迷宮(米沢嘉博・青葉伊賀丸)編集の『劇画アリス』への批判。

直方由衣「OUTSIDE」、p. 88
ムーンライダーズ「モダーン・ミュージック」、ヒカシュー「二十世紀の終りに」評。

橋本治(構成・イラスト)「2色扉 今すぐ解放されちゃう着せ替え人形セット」、p. 89
→特集扉イラスト。

橋本治「正しい愛撫に関する一考察 僕は好きな他人にしか触りたくありません。そして当然、好きな他人にしか触らせて上げたくありません。」、pp. 90–91
山岸凉子に言及。

井上英樹「正しい性病に関する一考察 僕は変態を解放してやりたかった――変態が普通の人間になれること。そのことがいちばん大事なことだと思ってる。」、pp. 92–93
大島弓子「いちご物語」に言及。

飯田耕一郎「正しい体位に関する一考察 体位なんてない!!!」、pp. 94–95

武上弘「正しい早漏に関する一考察 蘇えるソーローのテーマ」、pp. 96–97

山本夏「正しい避妊に関する一考察 あるいはそれでもすいかは育っていく」、pp. 98–99
大島弓子「赤すいか黄すいか」「綿の国星」に言及。

田中遊「正しい出産に関する一考察 あたしがあたしであるというのは、どういうことなのかな?」、pp. 100–101
大島弓子の諸作品に言及。

早川芳子「正しい絶頂に関する一考察 どうしてあたしはあなたを愛せるようになったのか」、pp. 102–103

⇒以上8本、特集「詳解・正しい性生活 七つの考察一つの実践」。特集内挿絵は井上英樹が担当。

田中遊(画)・梶原一茶(作)「女子高エイリアン」、pp. 105–110
→マンガ作品。梶原一茶=橋本治

 

 

『映画エロス』にかんする参考文献

飯田耕一郎「差しのべる手」、『ユリイカ』5月臨時増刊号(総特集:橋本治)、青土社、2019年、pp. 81–87
飯田耕一郎「極私的エロ漫画と評論の日々(4)」、『ビランジ』49号、竹内オサム個人発行、2022年、pp. 132–139
飯田耕一郎「極私的エロ漫画と評論の日々(5)」、『ビランジ』50号、竹内オサム個人発行、2022年、pp. 139–147
さべあのま高野文子飯田耕一郎「〈座談会〉電話口の橋本治 絵の中の回想」、『ユリイカ』5月臨時増刊号(前掲)、pp. 67–80
橋本治「あとがきじゃないあとがき」、『秘本世界生玉子 KIMPIRA-GOBOW for HuMen』北宋社、1980年、pp. 380–387
「オヤジにならずに大人になる方法(01) 橋本治さんの「これまで」と「未来」を語る作品になるはずだった」、webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」、2021年(2023年9月30日取得、https://www.1101.com/n/s/portlive/jinkoujima_sptalk2109/2021-10-19.html

 

リスト作成日:2023年9月30日
リスト更新日:
作成者:relu

 


[1] 「オヤジにならずに大人になる方法(01) 橋本治さんの「これまで」と「未来」を語る作品になるはずだった」、webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」、2021年(2023年9月30日取得、https://www.1101.com/n/s/portlive/jinkoujima_sptalk2109/2021-10-19.html)。

[2] さべあのま高野文子飯田耕一郎「〈座談会〉電話口の橋本治 絵の中の回想」、『ユリイカ』5月臨時増刊号(前掲)、p. 68。

[3] 飯田耕一郎氏にメールでお尋ねしたところ、橋本参加後の『映画エロス』主要メンバーは、編集長・林幸一郎、橋本治、田中遊(遅塚久美子)、飯田耕一郎、早川芳子、山本夏の6名との回答をいただいた。なお、「差しのべる手」には「もともとマイナーな出版社の雑誌だったので、編集長と編集者のふたりくらいだった」(p. 84)とあるが、飯田氏によれば「[こ]の部分[の記述]はアバウトで、出版社には岡野雄一氏もいたことからもうひとりくらい手伝いがいたのかなと思って書いたものです。じっさいは林さんひとりでやっていたようです」とのこと([]内引用者註)。編集会議については、「橋本治さんを中心に毎月新宿の喫茶で編集会議みたいな集会があっていろんな人が集まってきた」(飯田耕一郎「極私的エロ漫画と評論の日々(4)」、『ビランジ』49号、竹内オサム個人発行、2022年、p. 138)との記述がある。

[4] 北川れい子「少女マンガと女性マンガの初体験で感じたこと」(『だっくす』1978年7・8月号)にたいする中島梓の反論「拝啓 北川れい子様」(同9・10月号)をきっかけに、中島梓北川れい子の論争が勃発。これに乗じるようなかたちで『ウィークエンドスーパー』1979年2、3月号では当の北川れい子平岡正明亀和田武による座談会「くたばれ少女漫画!!」「続・くたばれ少女漫画!!」が企画された(辺見房子、末井昭、梅林敏彦が傍聴人としてクレジットされている)。編集部の企図は少女マンガを斬ることにあったが、じっさいには平岡と亀和田が少女マンガを擁護する側に回るという結末に終わった。