亜庭じゅん『大全』未収録批評リスト

 

亜庭じゅん大全 A LONG LONG HISTORY』(漫画新批評大系16号、迷宮’11、2011年12月31日発行)未収録の亜庭執筆の批評を以下にまとめる。再録はのぞく。

ほかにもご存じのかたがいらっしゃいましたらご教示いただけますと幸いです。

 

(1)迷宮刊行物に掲載された『大全』未収録の文章

『漫画新批評大系』掲載の「運動宣言」や「アリアドネの糸」など、迷宮を代表して/『漫画新批評大系』編集者として亜庭が執筆を担当したとおぼしき箇所については、『大全』編者である高宮成河氏の判断で未収録となっているとおもわれるため、ここでは採録しない。
ただし、『漫画新批評大系』第2期第4号(初版)の亜庭論考については、『大全』が改訂版のみを参照しているため採録した。
『漫画新批評大系』第2期第4号(特集「総括・花の二十四年組 午前1時のシンデレラたち」)には、1978年12月17日発行の初版と1979年4月8日発行の改訂版が存在しており、後者が刊行されるにあたって、紙面構成や挿絵カットの変更、文章の改稿など全面的な改訂がおこなわれている。亜庭が担当した論考に限定すると、初版には「総論 薔薇の魔法陣」、「山本鈴美香小論 天使の階段」、「萩尾とSF エドガー・ポーツネル、火星への旅」、「竹宮恵子の現在 少年たちの失楽園」、「「まんが文化論」を認知すべきか!?」、「マンガ・ファン共闘への途」が掲載されていたが、改訂版では「総論」「萩尾とSF」「竹宮恵子の現在」の3本が改稿のうえ「総論 薔薇の魔法陣」としてひとつの文章にまとめられている。また、「「まんが文化論」を認知すべきか!?」、「マンガ・ファン共闘への途」が削除され、「まんが戦線、異状あり!?」があらたに追加されている。
山本鈴美香小論」は未改稿のまま改訂版にも掲載されたが、原文では初版同様「44年組」となっている箇所が『大全』では「24年組」に変更されている。第2期第4号初版の「総論」においては「24年組」と「44年組」とが区別されていたが、改訂版「総論」ではすべて「24年組」に統一されていることをうけての『大全』編者の判断だろう。『大全』にはこの点についてことわりがないため、あらためて記しておく。

 

亜庭じゅん「総論 薔薇の魔法陣」、『漫画新批評大系』第2期第4号、迷宮’78、1978年12月17日、pp. 16–27

亜庭じゅん山本鈴美香小論 天使の階段」、『漫画新批評大系』第2期第4号(前掲)、pp. 28–37

葉月了「萩尾とSF エドガー・ポーツネル、火星への旅」、『漫画新批評大系』第2期第4号(前掲)、pp. 40–45

かがみばらひとみ「竹宮恵子の現在 少年たちの失楽園」、『漫画新批評大系』第2期第4号(前掲)、pp. 46–51

かがみばらひとみ「「まんが文化論」を認知すべきか!?」、『漫画新批評大系』第2期第4号(前掲)、pp. 114–119

K・H「マンガ・ファン共闘への途」、『漫画新批評大系』第2期第4号(前掲)、p. 120

 

(2)主に商業誌で展開された『大全』未収録の文章

とくに商業誌で展開された亜庭の文章は、『COM』や『漫金超』に掲載されたものなど一部をのぞいて『大全』には収録されていないため、現時点で確認できたものをリストに採録する。

*『わんだ~らんど通信』6号(わんだ~らんど、1983年4月1日)の「編集前記」では、『わんだ~らんどデータ通信』(大阪府立中央図書館国際児童文学館に1号収蔵、南端利晴南端裕子『遊ぶ本屋 まんが専門店わんだ~らんどの記録』(新文化通信社、1986年11月21日)に同書刊行時点で7号まで発行と記載)の刊行が予告されており、「〈状況論〉を漫画新批評大系編集発行人の亜庭じゅん」にとの記載あり(p. 141)。2024年5月4日時点で2号まで確認、3号以降については詳細不明。

*本リストの採録対象ではないが、「座談会 三流劇画バトルロイヤル」(『プレイガイドジャーナル』8月号、プレイガイドジャーナル社、1978年8月5日、pp. 36–43)に葉月了名義で参加。

 

葉月了「少女マンガの魅力 マンガファンからみた少女マンガのパターンと流行」、『むうむ』創刊号、婦人生活社、1977年11月15日、pp. 60–61
→左開き「男のページ」/右開き「女のページ」の両開き構成、頁数は「女のページ」参照。文章はp. 60のみ、p. 61誌面には「少女マンガファン誌GUIDE」として『漫画新批評大系』ふくむ12冊の同人誌のタイトル・写真・連絡先が、同小口部には葉月了のプロフィールが掲載されている。

葉月了「少年趣味、パロディ、SFとまんが同人誌はいま百花繚乱のまっただ中」、『本の雑誌』10号、本の雑誌社、1978年10月10日、pp. 45–47

バイ・バイ・バーディ「たまには……まんが評論家を評論してみよう!」、『Peke』10月号、みのり書房、1978年10月15日、p. 225
→亜庭の確証なし。この時期の亜庭の文章では斉藤次郎への批判と中島梓への賛同がくりかえし展開/表明されており、『Peke』掲載のバイ・バイ・バーディ(およびそれに類する)名義の文章と論調が一致している。やや筆が走りすぎの感もあるが、『大系』第2期第5号にはDirty Birdy名義の文章(『大全』に収録)があることから、亜庭と推定。

バイバイバーディ「野生の証明を証明してみよう」、『Peke』12月号、みのり書房、1978年12月15日、p. 79

ばいばいば~でぃ「みんなまとめてけなしちゃおう」、『Peke』1月号、みのり書房、1979年1月15日、pp. 173–174

バイ・バイデー「冬だ!!おかまだ!!吉永小百合バンザーイ!!」、『Peke』2月号、みのり書房、1979年2月15日、pp. 165–166

バイ・バーディ「全国のマンガファン諸君!! とりわけペケに結集する戦斗的愛読者諸君!! 今や70年代を終ろうとするに当たって、我々は諸君に対し、熱い友情と連帯のメッセージを送りたいと考える!!」、『Peke』2月号(前掲)、p. 167

亜庭じゅん「裏切られたぼくらの気持・・・・・・!」、『プレイガイドジャーナル』9月号、プレイガイドジャーナル社、1979年9月5日、p. 106(傍点原文)
栗本薫『ぼくらの気持』(講談社、1979年6月30日)書評。

亜庭じゅん「性別を超えるには 「少女マンガ」に託した自己肯定物語」、『日本読書新聞』1979年9月10日、4面
橋本治『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』前・後篇(北宋社、1979年4月1日/同6月25日)書評。

葉月了「アクション系」、『ふゅーじょんぷろだくと』4月号、ラポート、1982年3月1日、p. 89
→タイトル採録は見出しではなく目次を参照。見出しが『ポパイ』調の煽り文(おそらく編集部がつけている)のため。「1981年度総決算号」と銘打たれたこの号では、第1部「読者投票によるベストテン」、第2部「’81年度まんが界全状況」、第3部「’81年度発表作品ジャンル別総評」、第4部「資料編」の全4部構成で特集が組まれており、第3部の「少女マンガ」ジャンルの項目のうち、亜庭は葉月了名義で「アクション系」「24年組の現在」「森脇真末味」「三原順」「くらもちふさこ」を担当。確証はないが、無記名記事「スポーツ根性もの」(p. 94)の項目も文体・内容からして亜庭の執筆?

葉月了「24年組の現在」、『ふゅーじょんぷろだくと』4月号(前掲)、p. 93

葉月了「森脇真末味」、『ふゅーじょんぷろだくと』4月号(前掲)、p. 100

葉月了「三原順」、『ふゅーじょんぷろだくと』4月号(前掲)、p. 101

葉月了「くらもちふさこ」、『ふゅーじょんぷろだくと』4月号(前掲)、p. 104

葉月了「マンガ・ヒヒョウほど気楽な商売はない」、『ふゅーじょんぷろだくと』4月号(前掲)、pp. 271–272
→小特集「“まんが批評”とは何か2」に「迷宮スタッフ」の肩書きで登場。

亜庭じゅん「シャイな夜ふけの読書感想文(8) 本屋が本屋になったら、本屋の本が本になった?」、『プレイガイドジャーナル』11月号、プレイガイドジャーナル社、1982年11月1日、p. 30
→書評の対象は以下のとおり。『わんだ~らんど通信』4・5合併号、わんだ~らんど、1982年8月25日。

葉月了「求められるのはまんがの物語の再構築」、『COMIC BOX』4月号、ふゅーじょんぷろだくと、1983年4月1日、pp. 50–51
→「1982年度総決算号」をうたったこの号では、「’82まんが界総括アンケート 評論家篇」として「長編べスト5」「短編ベスト5」「’82年度私が支持した作品あるいはまんが家」「’82年度私が拒否した作品あるいはまんが家」「’83年度まんが何〈何処〉をめざすべきか」(太字原文)のアンケートが実施された。亜庭(葉月)はアンケートの形式を無視し、文章で回答。タイトルは見出しで採録。亜庭の文中に「求められるのは、まんがの物語の再構築」(p. 51)という一節があるため。

亜庭じゅん「“日常”の中での夢想、多様という名の均質化」、『わんだ~らんどデータ通信』1号、わんだ~らんど、1983年9月20日、pp. 26–29
→はつろくさき氏の情報提供による(2023年8月15日)。リスト作成者は2023年9月10日に現物確認。

亜庭じゅん「”ニューウェーブ” 概念としてのパイロット・フィルム」、『わんだ〜らんどデータ通信』2号、わんだ〜らんど1984年2月20日、pp. 36–38
→同号「編集後記」に「3号は7月中に発行の予定」(p. 52)との記述あり。

 

リスト作成日:2023年7月7日
リスト更新日:2023年8月15日→2023年9月11日→2023年9月19日→2024年5月4日
作成者:relu